きむらしろうクリニック
院長ブログ
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大腸ポリープ・大腸癌の分類

大腸ポリープがあると言われた人は、「癌ではないか」「そのうち、癌になるのはないか」と不安をもたれるのではないでしょうか? しかし、大腸ポリープの全てが同じように癌になるわけではありません。大腸ポリープにもいくつかの種類があります。「ポリープ」というのは、 大腸内腔へ突出した腫瘤を意味する言葉で、ひとつの病気を指す言葉ではありません。大腸の場合、大腸の粘膜からその内側の管腔に飛び出したイボのようなものは、 すべてその形からポリープと呼ばれます。
ポリープには良性と悪性があります。悪性のポリープはいわゆる大腸癌(がん)ですので治療が必要です。一方、良性のポリープはさらに大きく「腫瘍」と「それ以外のポリープ」 に分けられます。腫瘍以外のポリープには炎症性ポリープや過形成性ポリープなどがあります。炎症性ポリープは潰瘍性大腸炎、クーロン病、虚血性腸炎などの腸の炎症性の 病気や感染症など、腸に強い炎症が起こった後にできます。過形成性ポリープは歳をとると多くの人にみられるもので、一種の加齢現象とも言えます。この2つのタイプの ポリープは、基本的に癌とは無関係です。放置しても大腸癌(がん)になることはほとんどありません。

図1.大腸ポリープの種類

一方、腫瘍に分類されるタイプのポリープです。
腫瘍性のポリープにも良性と悪性があります。 悪性のポリープがすなわち「癌」です。ただし、癌といって もポリープ状の形をしているのは、多くの場合早期の癌です。 進行癌になると、もはやイボのような突起ではなくなるのでポリープとは呼ばれなくなります。良性の腫瘍は、「腺腫(せんしゅ)」と 呼ばれています。大腸ポリープの80%は腺腫で、特にS状結腸や直腸によくできます。そして、大腸癌(がん)との関係で一番問題になるのが、この腺腫なのです。 癌と同じように、腺腫は粘膜上皮を 形成する腺細胞が異常増殖したものです。そのため、大きな腺腫は癌になる一歩手前の状態(前癌状態)と言われています。 実際に、多くの大腸 癌は腺腫から発生すると考えられています。5mm以下の腺腫に癌がまじっている可能性はほとんどありません。しかし5mmから10mmの腺腫に癌が 混じっている可能性は4~5%といわれています。10mm、20mmと大きくなればなるほど癌が混じっている可能性がより高くなります。5%といえば20個に1個ということに なり結構な確率といえます。したがって5mm以上の腺腫は内視鏡的に切除し全体を調べる意義があると考えます。

このようにポリープといっても、そのタイプによって 意味合いは全く異なります。無用な心配をしないためにも、ポリープがどのタイプなのかをしっかりと診断することが大切です。腫瘍か腫瘍以外のポリープかは内視鏡 でほぼ判断がつきます。判断が難しい場合には、安全性を期して腫瘍と同じ扱いをする、つまりある程 度以上の大きさがあれば、切除して組織を確かめるのが原則です。 最近では拡大内視鏡という顕微鏡を備えた大腸内視鏡があり、早期大腸癌(がん)の診断や治療の適応決定に威力を発揮しています。
また、大腸ポリープはその形態によっていくつかの種類に分けられます。大腸ポリープの場合はその出っ張りの形態からIsタイプ、Ispタイプ、Ipタイプがあり、 特殊なものとして偏平腫瘍あるいは側方発育方腫瘍(LST)と呼ばれるものがあります。このLSTにはさらに表面がでこぼこした結節型(granular type)と表面が比較的平らな 非結節型(non-grannular type)があります。この中ではIpタイプやnon-grannular typeのLSTに癌が混在している可能性が高いようです。このように大きさだけではなく形態分類も 重要な診断治療の指標となります。