大腸癌(がん)検診の有効性などに関する評価は、最近始まったばかりです。1998年に発行された「がん検診の有効性等に関する情報提供のための手引き」 (厚生省・がん検診の有効性評価に関する研究班)によると、大腸癌(がん)検診は、がん検診の中でも有効性が高いほうなのです。 欧米の研究では、毎年検診を受けていると33%、2年ごとでも15%~21%、大腸癌(がん)の死亡率が減少すると報告されています。 しかし、集団検診は、あくまでも日本人全体のがん死亡率を減少させることを目的としたものです。言い換えれば、集団でのがん死亡率を減少させる効果はあっても、 個人レベルでみれば、見落としなどの危険性はありうるということを知っておくべきなのです。日本では、大腸癌(がん)の集団検診は、まず「便潜血反応2日法」が行われます。 この検査で異常があった場合に、内視鏡検査や注腸造影検査が行われます。便潜血反応査2日法というのは、連続して、2日の便をとり、 そこに見えないような血液が混じってないかどうか調べる検査です。この検査は、進行大腸癌(がん)の発見を目的とした検査です。早期がんの場合は必ずしも出血があるわけではないので、 見落としも少なくありません。進行癌(がん)の場合でも、1~2割は陰性、つまり異常なしとでることがあります。便潜血反応のみではとくに20mm以下の大腸癌(がん)発見は難しいと言わざるを 得ません。痔や腸の炎症による出血でも、陽性として出てしまうのも問題点のひとつです。それでも、スクリーニング検査に便潜血反応2日法が採用されているのは、費用効率の理由と、 大腸内視鏡検査や注腸造影検査などの精密検査は、検査を受ける人の肉体的な負担が大きいので、集団検診のように不特定多数の人を対象に行う検査には適さないと考えられているからです。
地域差がかなりありますが、便潜血反応陽性、すなわち大腸内視鏡や注腸造影検査などの精密検査が必要とされる人は、平均7%です。1000人に1人から2人の大腸癌(がん)がいると 考えられる集団を対象に行いますので、便潜血検査が陽性の人の35~70人に1人の割合で大腸癌(がん)が見つかることになります。 理想を言えば、大腸を肉眼で観察でき、異常があれば細胞を取って病理検査ができるという意味でも、全大腸内視鏡検査が望ましいと思います。 ただし、内視鏡検査は技術的な習熟が必要で、慣れない医師が行うと痛みが強かったり、大腸全体をみられないことも少なくありません。
手前味噌ではございますが、私のクリニックでは、盲腸までの内視鏡到達率は99%程度で、通常であればお尻からカメラを入れて盲腸に到達するまでに3分から5分ほどです。 大腸の走行に若干個人差があって10分程かかる方もおられますが、総じて検査時間は観察終了まで15分くらいです。 毎年大腸癌(がん)検診を受けることで、大腸癌(がん)のリスクは、かなり減少すると言われています。一方、大腸癌(がん)検診では、良性の大腸ポリープが発見される頻度がかなり高いのです。 その理由は、大腸内視鏡検査や注腸造影検査を受けると大腸癌(がん)だけではなくポリープもみつかるようになるからです。大腸ポリープには症状はほとんどないのですが、 年齢が高くなるほどポリープを持っていることが多いので、大腸癌(がん)検診を受けなければ見つからなかったはずのポリープが偶然発見されるのです。 この、たまたま見つかった大腸ポリープが、あなたの将来の大腸癌(がん)の危険性を教えてくれているのです。