きむらしろうクリニック
院長ブログ
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高濃度ビタミンC点滴療法とは

高濃度ビタミンC点滴療法とは?

一度の点滴でおよそ50グラム以上のビタミンCを投与する療法を超高濃度ビタミンC点滴療法といいます。
この治療法はここ数年新しいがん治療法として注目されており、選択的にガン細胞を叩くことができるといわれています。
米国やカナダで広まり、米国では2009年現在2万人程の医師が施行しているといわれており、近い将来「抗ガン剤」として正式に認可される可能性がある最新療法です。

ビタミンCとはどのような物質なのでしょうか?

ビタミンCは水溶性ビタミンとして非常に有名です。
人間はアスコルビン酸を体内で合成できないため、必要量をすべて食事などによって外部から摂取する必要があります。一方、多くの動物にとっては、ビタミンCは生体内で合成できる物質であり、特にヤギは多くのビタミンCを体内で作ることができます。面白いことに病気になったヤギは体内で通常の約6倍以上ものビタミンCを合成すると言われています。体内でビタミンCを合成できないのは、モルモットやオオコウモリ、ヒトを含む霊長類の一部などだけなのです。

ビタミンCはその抗酸化作用から美容にもいいし風邪を引いたときやその予防のためにもたくさん摂取するようにすすめられてきました。水溶性ビタミンですので過剰症を起こすことは少なく速やかに尿中に排泄されます。また、コラーゲンの生成を促進し歯茎の健康を保ったり、血管壁を強くしたり、怪我の回復を早めたりする作用があります。正常な体内では0.6-1.7mg/dLくらいの血中濃度とされていますが、多めに摂取することで抗ウイルス作用、ヒスタミン分解、さらに多量(300mg/dL以上)に摂取することで抗癌作用も発揮すると言われています。

癌に対するビタミンCの主な作用

  1. 抗酸化作用を有しており細胞の癌化を防ぎます。
  2. 免疫能を増強させ白血球やマクロファージなどの働きがよくなります。
  3. 胃癌や肝臓癌の原因といわれている「ニトロソアミン」の生成を抑えます。
  4. 抗癌作用を有するインターフェロンの生成を促進するといわれています。
  5. 副腎に働きかけアドレナリンの分泌を促進し抗ストレスビタミンとして働きます。

高濃度とはどのような意味合いなのでしょう?

通常の我々の体内には食事で摂取したビタミンCが存在しますが、その濃度はわずかに0.6-1.7mg/dLです。経口摂取で得られるビタミンCの血中濃度はそれほど高くありません。実験では0.2gのビタミンCを経口摂取したあとの血中濃度は1.2mg/dLでしたが、その6倍である1.2gを経口摂取してもその血中濃度はわずかに1.5mg/dLまでしか上昇しなかったという報告があります。 つまりは経口でビタミンCを摂取しても血中濃度の上昇はわずかであるということです。

一般に抗ウイルス作用を期待できるビタミンCの血中濃度は10-15mg/dL、ヒスタミン作用を発揮する血中濃度は88mg/dL程度といわれています。しかし、抗がん剤としてビタミンCを考える場合は、300mg/dL以上の血中濃度が必要であると考えられています。
ビタミンCの濃度を変化させた培地で膵臓癌、大腸癌、悪性黒色腫、骨肉腫などの悪性細胞を培養した実験がありますが、350から400mg/dL以上の濃度とした培地内では癌細胞は生存できないことがわかっています。
つまり、癌細胞にとって毒性を発揮するほどの大量の高濃度ビタミンCを投与することでビタミンCが抗がん剤として働くことができるということなのです。

血中濃度が350-400mg/dLとなるようなビタミンCの量を投与するには静脈投与、つまり点滴で摂取するしかありません。通常受ける点滴に混入するようなビタミンCの量は0.5gから多くて2gです。しかし、超高濃度ビタミンC点滴という治療で使用されるビタミンCは1回に50gから75gほどで、しかも短時間に点滴投与いたします。
それほどの大量のビタミンC点滴を投与しても人体の正常組織は大丈夫かと思われるかもしれません。これに関しては高濃度ビタミンC点滴療法の草分けであるリオルダン博士らが論文で安全性を発表しています。

【文献】
Casciari, Riordan et al, Br J Cancer 84:1544、2001
Riordan, Hunninghake et al, Health Science J 22:287、2003
Gonzalez et al, Integr Cancer Ther 4 : 32, 2005
Chen, Levine et al, Proc Natl Acad Sci 102 : 13604, 2005